古タイ文字の保持・伝承に生涯を捧げる教師
2019年11月15日付 VietnamPlus 紙
タイ人の書いた文字に関係する多くの書籍・資料を収集したハー・ナム・ニン先生
タイ人の書いた文字に関係する多くの書籍・資料を収集したハー・ナム・ニン先生

 タイ民族の文字やタイ民族の文化に関する資料や書物を集めるかたわらで、芸術家のハー・ナム・ニンさんは、教え伝えるのに非常に価値のあるタイ文字についての多くの資料の研究、編纂に専念している。

 高床式の家には、古タイ文字で書かれた何百冊もの書物や資料が、タイ族の慣習に従って並んでいる。教師であり、タインホア省の口承と文字の類型での優秀芸術家でもあるハー・ナム・ニン氏は、タイ文字との縁や、タイ族の「魂」を守り、受け継いできた過程での障害について語った。
 1949年ムオン・コーンの地に生まれる。ここはかつてタイ族のムオン(訳注:盆地につくられるクニ)の一つであり、現在はタインホア省バー・トゥオック県である。幼少期から、ハー・ヴァン・ネイン少年(ハー・ナム・ニン先生の幼少期の名前)は、両親に地元のタイ語と文化を教えられた。
 当時、ハー・ヴァン・ネイン少年は、両親や村やムオンの人と同様に、タイ語で話したり交流することができるだけで、タイ文字の読み書きは出来なかった。
 家族に育ててもらい、大きく成長したハー・ヴァン・ネインは教師になり、教育管理の幹部になり、山岳地方バー・トゥオック県の人民委員会文化担当副主席になった。
 まさにその時間は、彼に自身の民族の文化と文字に関する理解や研究をより多くする機会をもたらした。
 ニン氏によると、タイ族が独自の話し言葉と文字を持っていることは、ベトナムの他の多くの少数民族が持っていない点である。氏は常々タイ族は誰でもタイ語を話せなくてはならないし、カップ・タイという民謡の旋律を知らねばならないし、自分の民族の起源を理解していなければならないと強く望んでいた。
 よって、36年間の勤めのなかで、どのような地位にあっても氏が常に意欲を示していたのは、どのように自分たちの民族の文字や話し言葉を保存し、活かすかということだった。
 先人が残した特徴的な文化の基盤の継承におけるタイ族の一人としての重い責任と共に、氏は複数の資料を収集した。その資料とは年月をおうごとに埋没していくタイ族の伝統的祭礼、古典文学作品、古文書、風俗慣習に関する資料である。
 現在、マー川岸にある氏の高床式の小さな家には、数十年数百年の時を経たタイ文字で書かれた貴重な何百種もの本や資料が保管されている。
 この巨大な倉庫のために、ハー・ナム・ニン氏は、何年にも渡って熱心に収集し、どこそこにタイ族の文字に関連する本や資料があると聞けば、氏は一様にそれを求め、買うためにいつでもそこまで足を運んだ。
 氏の本棚には各総、各村の土地の筆界確認書、村落の居住共同体形成の歴史、功績のある歴史上の人物の系譜や逸話、丁田や産物、税の統計、などのようなタイ語で書かれた非常に貴重な多くの歴史資料がある。
 それらの資料の中で、取り上げねばならない最も貴重なものは、タイ文字で書かれた物語詩、『説話 天国への階段』で、500年以上前のレ・チユウ・トン王の時代に書かれたものである。
 その他にも、氏はタイ文字で書かれた非常に多くの書籍、詩集、物語集を持っている。例えば、『カム・パインの物語詩』、『クン・ルーとナン・ウア』、『恋人への送別の諭し』、『ファー・ズアの恋物語』などがある。
 これらはベトナムのタイ族と特にタインホアのタイ族の文化的精神的な生活において価値のある有名な作品である。
 教師であり、優秀芸術家であるハー・ナム・ニン氏は次のように述べる。タイ語は文法体系がベトナム語に似ているので学習しやすく、豊かな語彙と地域内の各民族共通の思想に合致している。
 タインホアの古タイ文字はタイ民族の文化の基盤の一部であり、非常に重要なものである。
 他の民族の文化と同様に、タイ族の文化は、ホーおじさんがかつて述べたようにますます豊かに美しくなり、モデル都市へと発展していくタインホア地方の形成の過程で強さと豊かさを創り出した。
 タイ族の文字や文化に関する資料や書籍の収集に専念するだけでなく、1985年から1995年にかけて、芸術家のハー・ナム・ニン氏は、タイ文字に関する資料の研究や編纂に励んだ。そうした資料とは『タインホアのタイ古文字』、『タインホアにおけるベトナムのタイ文字指導書』、『タイ族の言語教育資料』などである。

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( 翻訳者:中富春奈 )
( 記事ID:5062 )