カンヌ2023:ベトナム人監督にとって意義ある映画祭シーズン
2023年05月28日付 VietnamPlus 紙
【写真①】カンヌ国際映画祭総代表のティエリー・フレモー氏と記念撮影をするファム・ティエン・アン監督と撮影チームは(写真:Vietnam+)
【写真①】カンヌ国際映画祭総代表のティエリー・フレモー氏と記念撮影をするファム・ティエン・アン監督と撮影チームは(写真:Vietnam+)

カンヌ2023:ベトナム人監督にとって意義ある映画祭シーズン


2023年カンヌ国際映画祭にて2つの衝撃的勝利を収めた:トラン・アン・ユン(=Trần Anh Hùng/チャン・アイン・フン)が最優秀監督賞を、ファム・ティエン・アンは(トラン・アン・ユンに次いで)2人目のベトナム人監督としてカメラ・ドール賞(ゴールデン・カメラ賞、新人監督賞)を獲得した。



2023年のカンヌ国際映画祭は二人のベトナム人監督にとって非常に嬉しい結果と共に幕を閉じた。その情報は、フランス時間5月27日夜、ベトナム時間では5月28日明け方に組織委員会から正式に発表があった。

具体的には、ベトナム系フランス人のトラン・アン・ユン監督が、映画『La Passion de Dodin Bouffant』(仮訳:ドダン・ブーファンの情愛、別題『The Pot-Au-Feu(ポトフ)』)で最優秀監督賞を受賞した。また、ベトナムの若手監督ファム・ティエン・アンは映画『黄色の繭の殻の内側』(Bên trong vỏ kén vàng/Inside the Yellow Cocoon Shell)でカメラ・ドール賞を受賞した。

ベトナム映画初のカメラ・ドール受賞

『黄色の繭の殻の内側』は今年カンヌに参加した唯一のベトナム映画というだけでなく、カンヌ国際映画祭においてカメラ・ドール賞を受賞した初めてのベトナム映画でもある。これは若手監督の最優秀デビュー作品に贈られる賞である。

ファム・ティエン・アンの作品は、故郷に帰り、そこで過去や様々な欲望への執着に苦しむ一人のベトナム青年を通して、「私たちは何のために生きるのか」という問いかけに答える旅路である。5月25日の正式上映後、この映画には5分間もの賞賛の拍手が送られた。

国際的な映画批評家らは、この映画に多くの称賛の言葉を寄せ、タイのアピチャッポン、マレーシアのツァイ・ミンリャン、ギリシャのテオ・アンゲロプロスなどの現代映画界の各潮流の「巨人」たちと比較しても、非常にユニークな印象があると評価している。

以前、ファム・ティエン・アンは短編映画『常に備えよ』(Hãy tỉnh thức và sẵn sàng、英題:Be awake, be ready/Stay Awake, Be Ready)で2019年カンヌ国際映画祭に参加し、最優秀短編映画に贈られるイリー短編映画賞を勝ち取った。

1993年にはトラン・アン・ユン監督の映画『青いパパイヤの香り』もカメラ・ドール賞を受賞している。しかし、ベトナム語映画ではあるが、映画はフランス国籍の映画だった。

今年の映画祭でも、61歳の監督は映画『La passion de Dodin Bouffant』を持ち込んだ。それはロマンティックな映画だが、その語りは繊細で独特である。映画は19世紀のフランスが舞台で、その繊細さを表現するための言語として、手段として料理が用いられている。この作品は正式上映後、7分間の鳴り止まない拍手が送られた。

彼の馴染みのスタイル-作品の内容、筋書きに関してミニマリストであり、各フレームを通して観客の感情や感動を際立たせるというスタイル−がはっきりと見られる。

『La passion de Dodin Bouffant』はフランス映画で、有名かつ有能なジュリエット・ビノシュとブノワ・マジメルの二人の俳優が主演として参加している。この映画は、ヴィム・ヴェンダース、ケン・ローチ、是枝裕和、トッド・ヘインズ、ウェス・アンダーソンなどの著名な監督らの、注目すべき他の20作品とともに名誉あるパルムドール賞部門で争った。

アジアが映画祭におけるハイライトに

2023年カンヌ国際映画祭では、2人の日本人の才能も次々と輝きを放った。「第三の性」をテーマとした映画部門では、是枝裕和監督の『怪物』という作品が受賞した。

これより先の2018年、是枝監督は、万引きを働くある家族についての物語、日本の別の一面を見せた作品-『万引き家族』で反響を引き起こした。

俳優の役所広司も、ヴィム・ヴェンダース監督(ドイツ)の作品『パーフェクトデイズ』で、どこかミステリアスで印象的な役を演じ、最優秀主演男優賞を「持ち帰った」。役所広司は、『バベル』(2006年最優秀監督賞受賞)をはじめ、国内外の多くの作品で多様な役を演じる能力で知られている。

もう一つの今年のカンヌ映画祭のハイライトは、最高賞そのものである。その最高賞、パルムドール賞を受賞した作品は、ジャスティン・トリエ監督の『アナトミー・オブ・ア・フォール』で、これは、『チタン』(2021年、邦題『TITANE/チタン』)と30年前のジェーン・カンピオンの『ザ・ピアノ』(邦題『ピアノ・レッスン』)に次いで、史上3人目の女性監督による最高賞受賞となった。



2023年カンヌ国際映画祭における主要な賞の数々
パルムドール賞:『アナトミー・オブ・ア・フォール』("Anatomy Of A Fall")ジャスティン・トリエ監督
グランプリ:『ザ・ゾーン・オブ・インタレスト』(The Zone Of Interest)ジョナサン・グレイザー監督
審査員賞:『フォールン・リーブズ』(Fallen Leaves)アキ・カウリスマキ監督
最優秀監督賞:『La passion de Dodin Bouffant』(別題『The Pot-Au-Feu(ポトフ)』トラン・アン・ユン監督
最優秀脚本賞:『怪物』脚本家・坂元裕二
主演女優賞:メルヴェ・ディズダール/『アバウト・ドライ・グラス』(About Dry Grasses)
主演男優賞:役所広司/『パーフェクトデイズ』(Perfect Days)
カメラ・ドール賞:『黄色い繭の殻の内側』(Inside the Yellow Cocoon Shell)ファム・ティエン・アン
短編映画パルムドール:『27』フローラ・アンナ・ブダ監督
「LGBT」に関連した映画に与えられるクィア・パルム賞:『怪物』是枝裕和監督



【写真①】カンヌ国際映画祭総代表のティエリー・フレモー氏と記念撮影をするファム・ティエン・アン監督と撮影チームは(写真:Vietnam+)
【写真②】カメラ・ドール受賞のスピーチをするファム・ティエン・アン監督(写真:Vietnam+)
【写真③】2人のベトナム人監督、トラン・アン・ユンとファム・ティエン・アンが非常に有意義なカンヌ国際映画祭を記念して撮影。(写真:Vietnam+)

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:内藤碧 )
( 記事ID:6755 )