総選挙後の軍トップ、ミン・アウン・フラインの「ポジション」
2025年11月17日付 その他-キッティッメディア紙 - エーヤワディー 紙


軍委員会の指揮のもとで行われる2025年の総選挙が「偽物」の総選挙にすぎないということは誰もが知っている。ミャンマー国民全員が知っているように、全世界が知っている。

軍が怖いから、あるいは総選挙に関して一言も発することができないよう(軍が)法律を制定し弾圧しているからという理由でミャンマー国内に住む人々が口を閉ざしたところで、在外のミャンマー人や世界の人々には、クーデターを起こした軍事集団の指揮のもとで実施される総選挙が「偽物」にすぎないことが自ずと分かっている。

軍委員会による総選挙をASEANが承認していないのと同様に、国連も承認していない。しかし誰が承認しようがしまいが、自己の利益のために承認している(片手の指で数えられるほどしかない)一部の国々と、自分たち軍事集団に支持票を投じる者がわずかでもいれば十分だと軍委員会は考えている。

軍委員会の公式発表によると、12月28日に第一段階総選挙が実施されることが予定されており、残すところ約1ヶ月となった。こうした状況の中、総選挙前の時期の様相は、活気がなく、無関心で静まりかえっている。

通りでも市場でも喫茶店でも、誰も総選挙のことを話題にしておらず、関心があるようには見受けられない。軍委員会が今から3ヶ月前にさかのぼる8月に、今年12月28日に総選挙を実施する旨を発表した時から、「八百長選挙」であり、クーデター軍による「イカサマ」選挙にすぎないことをミャンマー国民誰もが知っている。そのため、軍委員会が実施する総選挙に関心を持つ者は誰もおらず、自分のこと以外には関心がないといった様子で過ごしている。

軍事独裁体制下において暮らすことを強いられているミャンマー人にとって、総選挙は突破口ではない。総選挙が終わっても軍事独裁の支配から解放されるわけではないことを誰もが知っている。そのため、軍委員会が実施する総選挙は自分たちとは無関係であるかのように無関心を決めているのである。

総選挙実施まで残り1か月余りに迫ったこの時期、街角には立候補者の看板がわずかばかり設置されているのが見受けられる。

2020年の総選挙の時のように、政党候補者の看板が立ち並ぶ様子は見られない。破壊されることを恐れてのことだろうか。立候補者のポスターが堂々と貼り出されている光景は見られず、目立たない物陰や、あるいは片隅に貼られているのが確認できるのみだ。

それほど多くはない。ポスター1、2枚程度だ。主に目に入るのは緑色の連邦団結発展党(USDP)の立候補者のポスターで、候補者としての資格が抹消されたテッ・テッ・カイン氏の人民先駆者党(PPP)の候補者の看板も見受けられる。

一部の場所では、コー・コー・ジー氏の人民党(PP)の候補者の看板も見られる。総選挙での投票を呼びかける看板が立てられているが、誰もその看板に興味を示す様子はない。

見せかけの総選挙だと知られてしまっているため、軍委員会も自分の仕事をやるまでだ。国民もそれぞれの家族の日々のくらしのために、それぞれ自分の仕事をせざるを得ないという状況だ。

軍委員会による総選挙では、すべての郡が対象となるわけではない。全国で167郡でしか実施できない。第一回総選挙は今年12月28日に実施され、第二回総選挙が2026年1月11日に続けて実施されることがわかった。

今回の総選挙に国民が関心を示していないことから、投票者数も皆無に等しいほど少なくなることを軍委員会は予測しているように見受けられる。

このことから、総選挙実施前に軍トップのミン・アウン・フラインは「総選挙を成立させるために最低限必要とされる投票者数について法律上の規定はない」と8月12日に開催された軍委員会の会合で発言している。投票者数は5割強にとどまるものと推測されており、議員数の半数が確保できれば、議会会議は成立すると軍トップは述べた。

軍委員会の主たる目的は、総選挙を開催すること自体である。選挙区や投票者数の多寡あるいは人数要件を満たしているか否かは重要ではないのだ。

2021年2月1日の総選挙で選ばれた文民政府から権力を奪い取った軍トップ、ミン・アウン・フラインは、憲法上許されていない6か月間に2回以上の非常事態宣言を繰り返し延長し、2025年2月には4年の期限を迎えた。

軍トップ、ミン・アウン・フラインは、4年以上にわたり政権を握った後、3月にベラルーシを訪問した際に初めて年末に総選挙を実施すると発表した。

総選挙が迫る中、クーデターを起こした「軍評議会」は、「軍委員会」へと改編を行った。軍指導者のミン・アウン・フラインは、軍委員会の大統領代行を務め、軍の最高司令官として権力を握り続けている。

今回の軍委員会の総選挙は国民と国際社会は、偽物の総選挙と認識しており、承認していないが、一部、軍委員会の総選挙を支持する者がいる。

ロシア、ベラルーシ、中国、インドは、公然と支持を表明しており、ASEAN加盟国のうちカンボジア、ベトナム、ラオス、タイも支持をほのめかした。

クーデターを起こした軍隊であるとして国際的には承認を受けていない軍委員会だが、総選挙が終われば、正当性を得られると考えており、中国、インド、ロシアの支援を得て、国際的な承認を取り戻すことを期待している。

今回の総選挙は、「雨よけ蓑を編み終わるや否や折り良く雨降る」という慣用句のように、小選挙区制(FPTP)や比例代表制(PR)、またその両方を組み合わせた混合型等、軍委員会の理想通りに作り込まれた過去に例を見ない制度によって実施される選挙なのだ。

対抗馬のいない軍委員会の連邦団結発展党(USDP)の独り勝ちとなる総選挙だ。みせかけの、偽物の総選挙という言葉通り、6つの大政党と57の小政党が参加はするが、頭数合わせの域を出ない総選挙だ。軍委員会の連邦団結発展党(USDP)は今のうちから閣僚名簿を作成している。

軍委員会の実施する総総選挙は、国民が無関心であろうと、あらゆる嘘で塗り固められた状態で終わることになりそうだ。「投票所で国民が進んで票を投じている様子」などとして(わずかな投票者を)軍のメディアで盛大に報じることだろう。

「国際選挙監視団が監視活動を行う様子」として写真を撮って見せつけることだろう。国際社会から信用が得られそうな様相をメディアで描き出して、国際社会からの支持を期待しているのだろう。

総選挙後の状況がまた興味深い。

軍委員会は、過去の歴代軍政のように別の形へと権力の形式を変えて引き続き支配しようと目指している。その状況において多くの人の関心を集めているのは、軍トップ、ミン・アウン・フラインの「ポジション」である。

総選挙後、軍トップ、ミン・アウン・フラインは「大統領」になるのだろうか。大統領のポストに就くには軍最高司令官の地位を誰かに譲る必要がある。軍最高司令官の職位に就いている限り、大統領に就任することはできない。

そのような状況の中、さまざまな推測が出ている。軍をコントロールしながら、大統領の上位に位置する職位を新設する可能性があるとの見方もある。今年8月に軍トップミン・アウン・フラインがマグウェー管区訪問の際に発した言葉は、注目に値する。「総選挙が終わり、新政権が誕生した暁には、国軍はもはや政治には立ち入らず、国防業務のみを継続する」と軍トップは発言したのだ。

「総選挙が終われば軍は防衛の任務のみを継続する」と発言していることからも、軍トップの将来の夢は、「大統領」になることだということが読み取れる。軍トップ、ミン・アウン・フラインが大統領になるには、総選挙に出馬しなければならない。

総選挙に出なくても、軍指名の大統領候補として国会で指名を受けることは可能だ。そのような状況の中で、一部の専門家たちは、軍トップが国軍最高司令官の地位を手放すことができるのか疑問を呈している。

ウィン・ミン大統領を、軍トップ、ミン・アウン・フラインが排除したのと同様に、次に就任する新国軍最高司令官が、大統領に就任するミン・アウン・フラインを排除する可能性がないとは言い切れない。軍は2021年以降、憲法を破ることも辞さない軍隊へと変わってしまったのだ。

総選挙後に、軍トップの「ポジション」がどうなるのかは、今のところ依然として謎のままである。

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( 翻訳者:S.Y, Y.Y, A.S,HN.M, HR.M )
( 記事ID:7233 )