アニス州知事、アイデンティティの政治利用に非難

2017年10月23日付 Kompas 紙
アニス・バスウェダン・ジャカルタ首都特別州知事は去る10月16日、ジャカルタ特別州庁舎で自身の政策についての演説を行った。
アニス・バスウェダン・ジャカルタ首都特別州知事は去る10月16日、ジャカルタ特別州庁舎で自身の政策についての演説を行った。
ジャカルタ、Kompas.com配信—

民間調査団体「インドネシア政治指標(IPI)」の事務局長であるブルハヌディン・ムフタディ氏は、アニス・バスウェダン・ジャカルタ特別州知事に人種や宗教、階層がらみの問題を煽るといったアイデンティティの政治利用をしないよう忠告した。

アニス州知事は先に行われた選挙以降分裂したままのャカルタ市民の和解を促し、緊張を緩和することを期待されている。

ブルハヌディン氏は正式に首都特別州知事に就任後の”プリブミ”(土着のインドネシア人)との言葉に触れたアニス州知事の演説について反応した。 アニス州知事の発言は論争を招いた。

政治学博士であるブルハヌディン氏は、アニス州知事が22分間の演説の中で意識的にプリブミという言葉を挿入していると評価している。

同氏は、アニス州知事がある特定の有権者グループにメッセージを送っていると推測。さらに2019年の大統領選挙との何らかの関係性を指摘した。

その理由として同氏は、演説の中でアニス氏はミナハサ、マドラ、バタックといった様々な地域の諺を引用していることを挙げる。アニス氏は首都特別州知事の任命に関して話しているのではないとブルハヌディン氏は評価している。

「私の見解では、アニス州知事は今インドネシアに話しかけている」とブルハヌディン氏はインドネシア地上波テレビ局メトロTVのインタビューで述べた。

アニス州知事による一連の発言を読むと、「プリブミ(現地人)」という単語が、ただ単にアニス氏が説明したように過去の歴史を描くためだけではないと、ブルハヌディン氏は見なす。

「『以前打ち負かされ、抑圧されたプリブミ(現地人)』という言葉を用いた直後に、『我々が独立している今、我々は私たち自国の主人となった』という発言をしている。その後に『家鴨の卵を雌鶏に抱かせる(他人のために働かされる)』というマドラの諺の引用されている」と同氏は述べた。

「働くのは我々で、楽しむのはほかの者という例え。ゆえにその一連の文章を読むとき、少なくともそのプリブミという言葉に従うあとの文は、明らかに現在の文脈を指し示していると理解できる」とブルハヌディン氏は言葉を重ねた。

ブルハヌディン氏は、「プリブミ」という言葉がアニス州知事のいう連帯と正義についての説明から発せられたのであれば問題はなかったとみなす。

同氏は、公平について、すなわち戦うべき格差への言及は、追求されるべき課題であると述べる。

さらに同氏は、「プリブミ」と「非プリブミ」の問題は、社会的不平等の問題として根本から解決されなければならないと述べる。また、この問題は政府に届けられるべき問題である。

しかし現実には、『プリブミ』という言葉はやがて、市庁舎の前で『アニスの選出はムスリムのプリブミの再興』という横断幕を掲げた多くの人々と結び付けられてしまった。

「人種に基づいて構築された言説が存在する。このことこそが私が実は否定し続けていることである、なぜならプリブミという用語は現地時間を3つに分割した植民地政策の遺物だからである。ヨーロッパ、そして中国、アラブやインドなどの他のアジア諸国、そしてプリブミと呼ばれる現地人である」とブルハヌディン氏は述べた。

「分割そのものがすでに人種差別的だ。さらにその言葉の意味が選挙の利害のために再生産されるなら、我々の国民性や多様性が危機に瀕することになる」とブルハヌディン氏は付け加えた。

ブルハヌディン氏はアニス州知事が2019年の大統領選挙に挑戦したとしても問題はないと評価している。ジョコ・ウィドド大統領がジャカルタ首都特別州知事に就任した時にも同様であったからである。



ブルハヌディン氏は、アニス州知事があらかじめ計算したうえで「プリブミ」について言及したと推測している。ブルハヌディン氏は、アニス州知事の演説について騒いでいる人々は2017年に行われたジャカルタ首都特別州知事選挙でアニス州知事とサンディアガ・ウノ・ジャカルタ首都特別州副知事を支持した人びとではなかったと述べた。

「しかし、モラルの上で危険があることを認めるべきである。すなわち、我々にとって、分裂を引き起こしうる問題含みの言葉を使って選挙での優位を確保するというリスクを冒すのはあまりにも危険だということだ。ここでやめるべきだ」と同氏は述べた。

「彼がすでに州知事に就任した時には、宗教問題や種族・人種・階層がらみの問題、政治的アイデンティティの問題は終わらせてなければならなかった。まさに今起きているこの問題が、引き続き利益の追求の切り札として用いられる可能性がある。アイデンティティの政治利用がもたらす危険とはこういうことだ」とブルハヌディン氏は締めくくった。

これに先立ち、アニス州知事はこの演説がジャカルタを含めたインドネシアでのオランダ植民地時代に関するものだと述べた。州知事は今日におけるこの言葉の使われ方を参照することはなかった。

「私は植民地時代のことについて述べており、『プリブミ』という言葉は植民地時代の文脈において用いた」と去る10月17日、メダン・ムルデカ・スラタン通りのジャカルタ特別州庁舎でアニス州知事は述べた。

植民地支配が首都で始まったことから、ジャカルタはインドネシアの中で最もオランダ植民地時代を間近で経験した街だ、とアニス州知事は述べた。

「オランダの支配が間近にあったのは、ジャカルタである。地方にいるとしよう。オランダが存在することは知っているが目の前にはない。間近で見ていたのはジャカルタの人々であった」とアニス州知事は述べた。

憲法や大統領令で「プリブミ」という言葉の使用を禁じていることについて聞かれると、アニス州知事は、「すでに知っている…」と答えた。


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翻訳者:川本 祥子
記事ID:3823