ジョコ大統領、改定KPK法代行政令発令にジレンマ: 国民の意思か政党か

2019年10月02日付 Kompas 紙
去る8月26日、大統領官邸で首都遷都について話すジョコ大統領
去る8月26日、大統領官邸で首都遷都について話すジョコ大統領
ジャカルタ、kompas.com配信
ジョコ大統領が汚職撲滅委員会(KPK)法改正案の取り消しを検討するという声明を出してから1週間が経った。
しかし、現時点で大統領による決定はまだなされていない。

大統領は連立政党の声を聞くのか、もしくは国民の熱い願いを聞くかで板挟みになっている。
当初から、KPK法の改定に関して政党と国民は意見を異にしていた。2014年から2019年の国民議会任期終了という時になって、突然改正KPK法の原案が浮上し、批判が後を絶たない。

汚職撲滅の活動家、研究者、そして汚職撲滅委員会の幹部らは国会の法律制定機関が作成した草案を拒絶した。
拒絶の理由は、改定KPK法においては、たとえばKPKは国家の一機関と位置づけられ、その職員は公務員となる。それによりKPKの独立性が損なわれることになるなど、汚職撲滅機関としての弱体化が懸念されるためだ。

監視評議会の設置により、通信傍受のためには評議会の許可が必要となる。このことはKPKの捜査や取り調べの妨害につながる。

KPKの2年以内で調査中止命令書(SP3)を発行することができる権限は、同委員会が巨大で複雑な事件に取り組むことを困難にするとみられる。

それにも関わらず、国民議会の全政党は傍観を続け、ジョコ統領はやはりKPK法改正に合意を示した。
火曜日の総会において、最終的にKPK法改正は公式に可決され、成立した。

改定KPK法は可決したものの、依然として職撲滅委員会の法律改定に関する反対の声が挙げられている。
それどころか、反対運動はさまざまな地域で学生グループを巻き込み広がり続けている。
学生たちは街頭に出て、KPKの弱体化とその他の問題のある法案の拒絶を表明した。

去る10月1日、大規模デモの初日にジョコ大統領は、当初改定KPK法を撤廃する法律代行政令(PERPPU)を発令することはないと表明していた。
しかし、2日後ジョコ大統領の態度は軟化しデモで街頭に出ている学生たちの要求通りにKPK法律代行政令を発令することを検討することにした。
このことは、ジョコ大統領が、去るモクヨウ10月4日にムルデカ宮殿で数十人の専門家と面会したあとに公表された。
2時間に及ぶ面会の中で、ジョコ大統領は学生たちの要求に答えるため改定KPK法に関する法律代行政令の発令について専門家たちの意見を得たと述べた。

国民議会によってすでに可決された改定KPK法に関して多くの意見が私たちに寄せられた。主として、その意見は法律代行政令を提案するものであった。「もちろん我々は、その意見を検討し、その後判断して、今日の夕方に出席する専門家らに伝達する」と出席者に付き添われたジョコ大統領が述べた。
有識者の中には、エリー・リアナ・ハジャパムカス元汚職撲滅委員会委員長、マフド・MD元憲法裁判所裁判長であり憲法学者のフェリ・アムサリとビビトリ・スサンティの両氏がいた。
そのほかには、グナワン・モハマド、ブトゥット・カルタラジャサ、フランツ・マグニス・スセノ、クリスティン・ハキム、クライシュ・シャイハブ、アズユマルディ・アズラの各氏が出席した。

ジョコ大統領は有識者たちの意見を考慮すると確言した。我々は特に政治的観点から検討し考慮するとジョコ大統領は述べた。

一週間後…

しかし、この10月10日の朝になっても、大統領は改定KPK法の法律代行政令を発令するかどうかをまだ決めていなかった。
一方、改定KPK法を拒否する学生デモは様々な地域で継続された。学生たちが参加したデモはしばしば警官隊と衝突に終わった。
数十人の学生が負傷し、警察に逮捕され、うち2人が死亡した。
ジョコ大統領は、デモで死亡したクンダリのハル・オレオ大学の学生2人のランディとユスフに哀悼の意を表した。
ジョコ大統領はランディとユスフの死亡について捜査するよう警察に指示した。

ジョコ大統領は学生らに対し、官邸にて対話するよう働きかけていた。しかし、学生らが対話の様子をメディアに公開するよう求めると、対話は中止に追い込まれた。

全インドネシア学生協議会で調整役を務めるムハマド・ヌルディアンシャ氏は、学生らによる要求はメディアや様々なデモ行動やメディアを通じて明白に広まっていると述べた。
ヌルディアンシャ氏は改定KPK法に関する法律代行政令の発行を含めた要求を満たすよう大統領に申し出た。

実際に必要とされているのは取引だらけの会合ではなく、学生の要求に対する確固たる態度である。「簡単に言えば、私たちの要求は大統領との会見に向けられたことはなく、ひたすら大統領が我々の要求を聞き入れることに向けられてきた」とヌルディアンシャ氏は述べた。

激しい学生デモが起きる中、ボゴール宮殿で30日夜、ジョコ大統領は政府与党の党首および幹部らと会見した。
会議は非公開の形で開催され、メディアに察知されることはなかった。しかしながら、開発統一党のアルスル・サニー党首が情報を漏出した。

同氏によれば、その会議内で、政党の党首らはジョコ大統領にKPK法改定についての論争を終わらせるための最終的な手段として、法律代行政令を公表することを要請したとのことだ。

「もちろん政党側は、法律代行政令という選択は最終的な選択にせねばならない、なぜなら他にも模索されるべき選択があるからである、ということを伝えるだろう」とアルスル氏は述べた。

この論争を終わらせるための法律代行政令以外の選択肢は、憲法裁判所での立法審査であると同氏は言った。

もし立法審査を選ぶのであれば、政府は国会での改正KPK法の議論まで戻り、条項を社会の要望に合わせたものに変えることになるだろう。

その一方で、アルスル氏は改定KPK法案はすでに憲法裁判所での立法審査に提出されていると述べた。
同氏はジョコ大統領がKPKの法律改正についての論争にあたって、連立政権からの希望を聞き入れることを期待した。

アルスル氏は、ジョコ大統領の支持者の大部分は彼らの政党員からなるため、政党の声は適切に聞き入れられるべきと述べる。

さて、ジョコ大統領は国民と政党の要求のどちらを選ぶのだろうか。


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翻訳者:三島かおり
記事ID:4936