世界難民デーにあわせて、第1回カイロ難民映画祭が開幕
2009年06月09日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ パレスチナ映画が第一回カイロ難民映画祭のオープニング作品に
2009年06月09日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面
【カイロ】
エジプトの首都カイロで、今月16日から20日までの期間、初の難民映画祭が開催される。会場は「パフォーミングアートのためのラワービト劇場」で、20本のドキュメント映画とドラマ映画が参加し、合わせて世界難民デー〔=6月20日〕の式典も行われる。
映画祭組織責任者の一人であるメイ・シュクリーは火曜日、ドイツ通信社に対し、映画祭は「難民のためのエジプト多文化評議会」による連帯のためのイニシアチブと、多くの人道支援組織の代表者や弁護士、市民運動の活動家や学生など、暴力と迫害のために空前のレベルで増え続ける難民の問題への関心で結ばれた人々との協力によって成り立っていると語った。
映画祭の公式スポンサーリストには、Movies that Matter映画プロダクション、在カイロ・オランダ大使館、ドイツ文化センター(ゲーテ・インスティテュート)、カイロ・アメリカン大学の移民・難民研究センターなどの名が並んでいる。
主催者達によると、カイロ難民映画祭はエジプト社会とエジプト国内に存在するさまざまな難民社会との相互理解の強化を目的としている。グローバリゼーションがこれらの難民達に国境を越えてより安全な地域へ移動することを可能にし、紛争の継続が故国への帰還を手の届かない夢にしていることで、避難先の受け入れ社会とのローカルな融合が大きな重要性を持つようになっているためだ。
メイ・シュクリーは、映画祭の上映作品の選択にあたっては、啓発や観客の共感をひきおこす力があるかどうかに最も注目したと言う。難民問題を大衆に提示する目的で、さまざまな難民社会の物語が語られていたり、難民となった多様な人々の生活や闘いや達成や勝利の詳細が語られている作品に焦点があてられた。
映画祭のオープニングを飾るのは、パレスチナ映画『この海の塩』。監督はアンマリー・ジャースルで、昨年のカンヌ映画祭で「ある視点」部門で上映されるなど、多くの国際的な賞を得ている。この映画ではアメリカで暮らす第3世代のパレスチナ難民女性の日常が語られる。彼女は祖父が難民となってから60年の後、祖父の預金を取り戻しに祖国に戻る。またオープニングセレモニーでは、音楽グループ「一方通行」のコンサートも行われる。
映画祭では別のパレスチナ映画『スリングショット・ヒップホップ 』も上映される。これはエジプト初公開となる作品で、ガザ地区、ヨルダン川西岸地区、イスラエル領内に生きるパレスチナ青年たちの物語を集めたドキュメンタリー映画である。彼らはヒップホップ音楽に出会い、それを占領によって課された分断状態や貧困を克服する手段として利用している。この映画は先の2008年サンダンス映画祭にノミネートされた。
カンボジアからは、2007年のアムステルダム国際映画祭で賞の一つを受賞した映画『ニューイヤーベイビー』が選ばれた。これは難民キャンプでカンボジアの新年に生まれた女性についてのドキュメンタリー映画で、クメール・ルージュ政権の時代に離散した家族を再会させるため、カンボジアに旅する様子が撮影されている。
また、祖国から脱出する途中で死の危険に直面する北朝鮮の人々を描き、多くの賞を受賞した映画『ソウル・トレイン』、歌手カミリア・ジュブラーンの家族-兄弟と両親―を通して2世代のパレスチナ人たちの生活と思考の様式を結びつけ、抗議と希望のはざまにある文化的アイデンティティーを問いかける映画、『ウードの調べ』も上映される。
映画祭期間中は、芸術や写真、映画製作のワークショップが行われ、さまざまな年代の難民やエジプト人の子どもや若者たちを製作プロジェクトに参加させる。その成果は期間中に展示される予定。
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( 翻訳者:香取千晴 )
( 記事ID:16707 )