■近代国家の概念においても諸部族は存続し、更新されてゆく!
【イラク:ワーイル・イサーム】
政治的情勢や忠誠心に変化は生じたものの、バシール家の指導者層は依然として、部族というものが常にそうするように、部族の存続と役割を維持するための弛まぬ努力のなかで、政治同盟(相手)を天秤にかけることによって、強固であり続けている。一方トルコは、東部の獅子軍やアブー・アムシャ司令官の師団(スルターン・スライマーン・シャー師団)などの、シリア北部の部族的特徴をもつ諸派閥と共に行動すること以上に良きことを見出していない。そしてシュアイタート部族も、自身の目的のために数々の政治的名目を利用する「部族的復讐」の例として現れた。シュアイタート部族は、東部の獅子軍においてはシリアの体制寄りとして観測され、バーディヤ地域(シリア中央部に広がる砂漠地域)においてはシャーム解放機構(旧ヌスラ戦線)寄りとしてみられ、あるいは親シリア民主軍としても観測される。同部族はその全ての事例において、バーディヤ地域で彼らの構成員を追い立て殺害した仇、イスラーム国と戦っているのだ。
イラク、シリア、レバノンでは、民族的な部族の役割が非部族地域で弱まった際には、精神的部族、つまり宗派の役割が高まっていることが分かる。それはもう一つの原始的紐帯であり、国民国家の概念に逆らい、近代国家の土台を破壊するものだ。
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