■近代国家の概念においても諸部族は存続し、更新されてゆく!
【イラク:ワーイル・イサーム】
イラク、シリア、レバノンにおいて人種的な部族の役割が非部族地域で弱まったとするなら、精神的部族、つまり宗派の役割が高まっているといえる。それはもう一つの原始的紐帯であり、市民(citizenship)の概念に逆らい、近代国家の土台を破壊するものだ。
このようにして、アラブの春における諸革命やその革命の陣痛の期間が生んだ紛争は、シリアにおいては宗派的特徴を、リビアにおいては部族的特徴をもった。そして最初の革命の始まりにおいてすらも、1世紀前から続くミスラータとバニー・ワリードのワルファラ族の間の紛争の痕跡が明らかになり、それはあらゆる段階において強い影響を持ち続けた。それはバニー・ワリードが統治基盤であったカッザーフィー元最高指導者が消えたのちですらも、スィルトやバニー・ワリードの部族たちは、ミスラータが基盤の1つであった新体制(国民合意政府、GNA)へ反対する地点であり続け、その後イスラーム国が台頭した期間においても同様の事態は繰り返された。そしてハフタル将軍がタラーブルス(トリポリ)を制圧しようとした最後の段階においてすらも、あらゆる当時者たちが地域的および部族的な色あいに依拠していた。ハフタル将軍は東部において数々の部族を頼りにしている。それらの中には歴史的指導者ウマル・ムフタールが属していたウバイダート族、アワーキール族、カッザーフィー元最高指導者の妻が属していたバラーサ族、また執行評議会ムハンマド・メンフィー議長が属するミンファ族や、マグリブ族などが挙げられる。
(5)に進む
(3)に戻る