革命時に民族問題、宗教問題に対する扇動が増えているという論文が出た

2022年10月16日付 その他 - RFA ビルマ語 紙
2022年2月11日、ザガイン管区内で発砲練習をしている一部僧侶の様子。
2022年2月11日、ザガイン管区内で発砲練習をしている一部僧侶の様子。
 ミャンマー政治史を通して、軍のクーデターにより憎悪、急進的な思考が発生し、暴動、対立が発生してきているということを述べた論文を、ニャンリンティッ研究会が10月13日にオンライン上で公開した。
 「ナショナリズムと憎悪への挑戦」というタイトルのこの論文では、2021年に軍がクーデターを起こしてから、軍支持者、民族問題と宗教問題に対する過激派の様々な様子や活動について研究、収集し明らかにしている。
 「このような国では銃を合法的に所持している。軍事訓練が施されている。軍事訓練には、僧侶と一般人が一緒に参加している。」
 クーデター後、ナショナリストが武装組織や報道関係者と偽って出没しているのを見ることができると論文を発表したニャンリンティッ研究会顧問のコー・モーテッネは本紙に述べた。
 「ピューソーティ(訳註: 軍評議会の支援のもと民主派の活動家などを襲撃している暴力集団。詳細は記事番号5941参照 )は、以前はピィードゥーソヮンアーシン(訳註: クーデター以前に暗躍し、民主派の活動などの弾圧などを行った暴力集団)や民族宗教保護協会(マバタ)、「969」(訳註: マバタが行ってきた仏教保護運動のシンボルとなる数字。団体名ではないがここではその運動に関わった組織を指していると思われる)のような団体だとされてきた。そしてその3つの団体は一人だけが責任を持って運営しており、またそれぞれの団体はその団体自体が責任を持って運営している状態で出現してきた。しかし2021年のクーデター以後、軍は支援を通じてピューソーティを国家の表舞台ともいえるような場所へ引っ張り上げたのだと私たちは見ている。軍はピューソーティを全面的・直接的に支援しているのだと考えている。」
 ピューソーティ、トゥエダウ(訳註: クーデター後の2022年4月ごろから現れた暴力集団。軍政支持者で民主派の活動家などを襲撃している)、ピィードゥスィッなどの団体は、軍評議会に対抗している組織や民主主義を求める政党の党員、報道・メディア従事者、または軍のクーデターに反対する人々に反撃するために生みだされてきたのがわかるという。一方、軍評議会側はピューソーティ、トゥエダウといった組織の存在を否定した上で、評議会が武器を供与した団体には前述のピィードゥスィッという名前をつけている。
 「我々ビルマは以前から武器を所持するといったことがかなり困難な国家である。そのような国家においてカンバルーのほうを見ても、タウンジーのほうを見てもこのような場所で銃を正式に所持し、部隊を組み、軍事訓練を施している。そこでは僧侶と一般の人々が一緒に参加している。それらを見張っているというということは、軍評議会の何らかの許可、何らかの援助を得ずに軍事訓練を施すため彼らの手に武器をとどけることは当然できない。そしてトゥエダウによる人々の殺害と拘束、それらの犯罪が表に出てこないようなことは、つまり現在支配している軍評議会とナショナリストの間に重大なつながり・援助が存在し続けていることが考えられる。
 コー・モーテッネの証言だ。彼らの研究会の論文は、情報メディア、様々なソーシャルメディアで述べられてきた情報を基にしてまとめているのと同時に、彼らとしても別個に調査してきた内容を含むと述べた。
 ナショナリズムに関する積極的な活動をしている組織と名乗ってきたソヮンアーシン、マバタは、以前、宗教問題・民族問題に基づく憎悪を人々の間で流布し対立を起こそうと扇動してきたことがあったと論文にて述べられていた。
 政党への執着、人物への執着で憎しみが広がるようにやっていたのも選挙期間中にあったといった。今はというと、ソヮンアーシン、マバタという名前のグループはもうなく、ピューソーティ、トゥエダウ、国軍を支持する人たちの組織をはじめとする団体の活動だけが見られるという。彼らは軍クーデターを支持する集会を競って開催すると同時に、クーデターに反対する人々・組織を脅迫して、拘束し殺害したことがあったとも言った。
 今、武装革命への異民族、異教徒の参加も彼らは指摘し、宣伝し、扇動しているとコー・モーテッネは言った。
 「地上部隊の中にイスラム教徒がいる。これはいいことではないということ、一部の人はイスラム協力機構(OIC)の支援を受けて行っていると主張していることが引き続き見られている。現在は人民解放ムスリム戦線。このような組織が現れたときにこれは宗教を基盤とした組織であると言って宣伝していた。最悪なのは仏教の僧侶が自ら率いて武装組織を編成していること、彼らがフェイスブックやソーシャルメディアを通じて公式に広めていることが大変大きな問題だと私は考える。」
 ミャンマー国軍は彼ら自身を仏教徒ビルマ人でミャンマーを保護する組織として姿を表し、ナショナリストだと自認している人たちを継続して支持してきたのだと言った。ミャンマーの政治史を通じて、マイノリティに対して抑圧的であったように、イスラム教徒に対して向かう抑圧・攻撃はより著しかったと論文で明らかにされている。
 この対立は噂や騒ぎを起こすための扇動から始まった。現在、過激派は軍の望み通りのプロパガンダ、憎悪拡大のために幾度となく起こってきた対立の連鎖に再び向かっていることも心配していると述べた。
 そのような事態を防ぐために、国民統一政府(NUG)、革命勢力と国民一人一人が注意を払い、SNS上で憎悪に満ちた書き込みを避けるべきだと論文が推奨している。
 そうして初めて、春の革命の時期が終わったときに、民族問題、宗教問題に関して憎悪や急進的思想などがない社会になり得るのだとニャンリンティッ研究会の論文が促したことが分かった。


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翻訳者:H.O, S.T.M, M.I, N.M.M, K.K.M
記事ID:6513